不倫・不貞行為
配偶者の不倫は、離婚する理由の一つになりますが、法定離婚原因として認められているのは、不貞行為だけです。
また、不倫相手に慰謝料を請求できるのも、原則として、不貞行為が確認された場合だけです。
では、どの程度の浮気や不倫なら法律上、不貞行為と言えるのでしょうか?
事例を挙げて解説します。
不貞行為とは
不貞行為はどの年齢層にとっても大きな離婚原因の一つです。
不貞行為を表す表現としては、不貞行為の他、浮気、不倫といった言葉が使われることがあります。
辞書で引くと、
浮気は、一人の異性だけを愛するのではなく気まぐれに別の異性にも心を移すこと。
不倫は、道徳に背く男女関係のこと。
不貞行為は、夫婦間の貞操を守らないこと。
おおよそ、このような意味になっており、程度に差があることがわかります。
法定離婚原因は「不貞行為」
民法770条には、離婚の訴えを提起できる5つの事例が列記されています。これを法定離婚原因といい、裁判所に認めてもらうことにより一方的に離婚できる事由になります。
その一号に「配偶者に不貞な行為があったとき。」と記載されています。
つまり、浮気や不倫に留まらず、「不貞行為」と呼べる行為があった場合のみ、一方的に離婚できるということです。
不貞行為とは
では、不貞行為とはどのような行為のことでしょうか?
この点については、明確な判例があり、次のように定義されています。
配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいうのであつて、この場合、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わない(最判昭和48年11月15日 民集 第27巻10号1323頁)。
つまり、性的関係(肉体関係)があるかどうかが、大きなポイントになります。
性的関係に至らない程度で、浮気や不倫に留まる場合は、不貞行為に当たらないため、法定離婚原因にはなりません。
不貞行為になるケースとならないケース
具体的にどのような行為を行っていた場合に不貞行為になるのでしょうか。
不貞行為になるケースとならないケースをそれぞれ確認しましょう。
不貞行為になるケースは、既に紹介した通り、配偶者以外の人と性的関係(肉体関係)を持っている場合です。
具体的には、配偶者以外の人とラブホテルに複数回出入りしていることが確認されている場合は、不貞行為と判断されやすくなります。
探偵に依頼して、こうした現場を押さえた場合は、配偶者の不貞行為を示す有力な証拠になります。
逆に不貞行為にならないケースは次のような場合です。
- 配偶者以外の人と仲良く手をつなぎ合っていた。
- 配偶者以外の人と抱き合ってキスをしていた。
- ラブホテルで行為に及んだけど一回限りで終わった。
- 配偶者が風俗に通って行為に及んでいた。
- 婚姻関係が破綻してから配偶者以外の人と性的関係を持つようになった。
配偶者以外の人とのラブホテルの出入りが一回でも確認されれば、不貞行為ということはできますが、一回限りにとどまる場合は、離婚する理由としては弱いと判断されることもあります。
また、配偶者の風俗通いが不貞行為と判断できるかは、微妙なところですが、何度注意しても改めない場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚できることもあります。
さらに、既に別居しているなど婚姻関係が破綻した後で、不貞行為が繰り返されていたとしても、離婚する理由とすることはできませんし、下記の慰謝料請求も難しいことがほとんどです。
配偶者が不貞行為をしていた場合は何ができるのか?
例えば、夫が不貞行為をしていた場合、妻としては次のような行為ができます。
- 離婚の訴えを提起できる。
- 夫と不倫相手に対して慰謝料請求ができる。
一つ一つ確認しましょう。
離婚の訴えを提起できる
不貞行為は、法定離婚原因に当たるため、妻は、離婚の訴えを提起し、勝訴することにより、夫が拒否したとしても離婚が可能になります。
離婚の方法としては、協議離婚、調停離婚、裁判離婚が主な方法ですが、裁判離婚は最終手段です。
協議離婚、調停離婚では、妻だけが離婚したいと思っていても、夫が離婚に同意しない限り、離婚することはできません。
裁判離婚の場合は、不貞行為の証拠さえ、示すことができれば、夫が離婚を拒んでいても、離婚が可能になります。
夫が離婚を拒み続けても、最終的には裁判離婚で決着してしまうため、協議離婚の段階で話がまとまることも少なくありません。
夫と不倫相手に対して慰謝料請求ができる
夫の不貞行為により、妻が精神的苦痛を被った場合は、慰謝料を請求することができます。
請求相手は、夫と不倫相手の双方で、どちらに対しても全額の慰謝料を請求することができます。
例えば、妻が請求できる慰謝料の額が100万円の場合は、不倫相手一人に対して100万円全額請求することも可能です。
夫と不倫相手の債務は連帯債務となるためです。
不倫相手が100万円全額支払った場合は、不倫相手は夫に対して、責任の程度に応じて求償することができますが、夫と不倫相手で話し合えば良いことで、妻としては無関係になります。
ただ、離婚しない場合は、妻が100万円もらっても、夫婦の財産から不倫相手に対して、夫の負担部分を支払う形になるケースもあります。
この場合は、慰謝料の額を減額する代わりに求償権を放棄して貰う形で話を一度にまとめることも可能です。
不貞行為の慰謝料請求には時効がある?
不貞行為の慰謝料請求には時効があります。
不貞行為の慰謝料請求権は、民法上、「不法行為による損害賠償請求権」として行使します。
具体的には次の期間のいずれかを経過することで時効になります。
- 被害者が不貞行為及び不倫相手を知った時から3年間
- 不貞行為の時から20年経過したとき。
慰謝料請求を検討している場合は、不倫相手も分かった段階ですぐに行動することが大切です。
まとめ
配偶者の不倫が、不貞行為に当たるかどうかは、事例によって異なります。
不貞行為に当たるかどうかによって、離婚に向けた協議が有利にも不利にもなりますし、慰謝料請求ができるかどうかも違ってきます。
また、配偶者の不倫を疑っていても確固たる証拠がない場合は、不貞行為を主張することは難しくなります。
配偶者の不倫で離婚を検討するほど悩んでいる方は、早めに弁護士にご相談ください。