離婚できる理由
夫婦の協議で一致すれば、どのような理由(原因)でも離婚することができます。
ただ、配偶者が離婚を拒否している場合は、法定離婚事由がないと、離婚の交渉を有利に進めたり、裁判離婚に踏み切ることが難しくなります。
この記事では、4つの法定離婚事由(原因)を中心に解説します。
夫婦が一致すれば理由(原因)なしで離婚できる
結婚は、男女が真に社会観念上夫婦であると認められる関係を築きたいと思った場合に婚姻届を出すことで成立します。つまり、偽装結婚等は原則として無効です。
では、離婚はどうでしょうか?
離婚については、婚姻ほど厳格には解釈されておらず、夫婦の双方に離婚届を出す意志さえあれば良いとされています。
そのため、生活扶助を受ける目的だけのために形式的に離婚することも有効と解釈されています。
つまり、婚姻と比べると、離婚することのハードルは低いということです。
そして、夫婦の双方が離婚届にサインする意思さえ有していれば、離婚の理由(原因)は必要ありません。
配偶者が離婚を拒否している場合は?
配偶者が離婚を拒否している場合は、他方が勝手に離婚届を出しても無効です。
この状況で離婚したい場合は、次の2つの方法のいずれかを選択するしかありません。
- 配偶者と協議や調停を行い離婚することに合意してもらう。
- 法定離婚事由を主張して裁判離婚を試みる。
法定離婚事由とは、配偶者が離婚を拒否していても、一方的に離婚できる事由です。
法定離婚事由があれば、離婚の訴え(裁判離婚)により、裁判所に離婚を認めてもらえます。
4つの法定離婚事由(原因)とは
法定離婚事由は、次の4つです。
- 配偶者が不貞行為を行っている場合。
- 配偶者に悪意で遺棄された場合。
- 配偶者が3年以上生死不明の状態にある場合。
- その他婚姻を継続し難い重大な事由がある場合。
※令和5年の民法改正により、法定離婚事由の一つである「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合」が削除されました。
4つの法定離婚事由を一つ一つ確認していきましょう。
配偶者が不貞行為を行っている場合とは
法定離婚事由の1つ目は、配偶者が不貞行為を行っている場合です。
世間では、「不倫」や「浮気」など様々な言われ方をしますが、これらにも程度があります。
例えば、
- 配偶者以外の人と仲良く手をつなぐ等カップルのような関係になっている。
- 配偶者以外の人と抱き合ってキスをしている。
配偶者から見れば、これらの行為は許しがたい、浮気や不倫と考えるかもしれませんが、これらの行為だけでは、不貞行為とは言えません。
不貞行為とは、「配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」を意味します。
つまり、肉体関係に発展している場合が不貞行為に当たると解釈されています。
配偶者の不貞行為を理由に離婚する場合は、配偶者と不倫相手2人でラブホテルに出入りしている場面を押さえるなどして、不倫の証拠を集めることが重要です。
配偶者に悪意で遺棄された場合とは
民法752条には、夫婦の同居義務と互いに協力し扶助する義務が定められていますが、この義務を配偶者が一方的に放棄することが「悪意の遺棄」に当たります。
具体的には、
- 単身赴任等が必要なく、一緒に暮らしたいのに同居してくれない。
- 専業主婦(主夫)である配偶者に生活費を渡さない。(経済的なモラハラ、経済的DV)
- 夫婦の一方が病気等で困っているのに、他方が看病もせず病院にも連れて行かない。
こうした事由がある場合は、配偶者に悪意で遺棄されたことを理由に離婚することができます。
配偶者が3年以上生死不明の状態にある場合とは
配偶者が家出した後で、3年以上生死不明の状態にある場合です。
生死不明の状態ですから、単に家出しただけでなく、携帯電話でも連絡が取れなかったり、既読が付かないような状態を意味します。
配偶者が婚姻生活に嫌気がさして自分から姿をくらますこともありますが、認知症を患うなどして徘徊し、そのまま行方不明になるケースもあります。
いずれの場合でも、3年以上音信不通の状態が続いていれば、離婚することができます。
その他婚姻を継続し難い重大な事由がある場合
上記までに解説した3つの法定離婚事由以外にも、婚姻生活を続けることが難しい事由があれば、離婚することができます。
その他婚姻を継続し難い重大な事由は、調停離婚や裁判離婚の事例の蓄積により、様々なものが挙げられています。
代表的な事由を紹介します。
性格の不一致
離婚の理由として頻繁に上げられるのが夫婦の性格の不一致です。
性格の合わない夫婦が一緒に暮らすことはお互いにとって苦痛でしかありませんから、離婚の理由とすることもできますが、裁判離婚の原因としては、やや弱く、これだけでは離婚は認められない傾向です。
性交不能等
性交不能、性交許否、性的異常により、夫婦の正常な性行為が難しい場合は、離婚が認められる可能性があります。
DVやモラハラ
配偶者から耐えがたいDV(ドメスティック・バイオレンス)やモラハラ(モラルハラスメント)を受けている場合は、離婚が認められる可能性が高いです。
DVの代表例は、殴る、蹴るといった身体的暴力ですが、次のような行為もDVに当たります。
- 心理的DV:大声で怒鳴ったり、人格を否定する暴言を吐く、SNSによる誹謗中傷、行動を監視するなど。
- 経済的DV:生活費を渡さない、配偶者に無理やりお金を出させる、配偶者の預金を勝手に使うなど。
- 性的DV:性行為を無理強いする、拒否しているのにわいせつなものを見せる、避妊を拒否する、中絶を強要するなど。
また、モラハラは、心理的DVと重なりますが、これ以外にも夫婦の一方が相手を自分に従属する物であるかのように扱う行為が該当します。
DVやモラハラは、主要な離婚原因の一つです。
ただ、これらの行為は、家庭内という密室で行われるためにDVやモラハラを行っていることの証拠がなく、立証が難しいことが問題となっています。
夫婦の一方がDVやモラハラを受けていると主張しても、その証拠がないと、裁判所としても一方の言い分だけで、認定することはできません。
DVやモラハラを理由に離婚するにはどのような証拠を用意したらよいのかは、事案ごとに異なりますから、弁護士にご相談ください。
まとめ
配偶者が拒否していても、一方的に離婚することができる4つの法定離婚事由(原因)について解説しました。
法定離婚事由を理由に裁判離婚に踏み切るためには、証拠が必要です。
協議離婚や調停離婚の場で、法定離婚事由を持ち出す場合も証拠があった方が説得力が増しますし、有利に離婚の交渉を進めることができます。
法定離婚事由があると言えるのか、どのような証拠を用意したらよいか悩んでいる方は、早めに弁護士にご相談ください。