遺留分侵害額請求
遺言による偏った相続や不公平な財産分配が行われると、家族間で深刻な対立が生じることもあります。
遺留分侵害額請求は、こうした不均衡を正し、公平な相続を実現するための重要な制度です。
本記事では、請求の仕組みから計算例、実際に起こりやすい問題、弁護士に依頼する意義までをわかりやすく解説します。
遺留分侵害額請求とは?
遺留分侵害額請求とは、相続人の中で本来保障されるべき最低限の取り分(=遺留分)が侵害されたときに、その不足分を金銭で請求できる権利をいいます。
たとえば、遺言書によって一部の相続人に偏った財産分配が指定された場合、他の相続人が極端に少ない財産しか受け取れないことがあります。
このようなとき、遺留分を持つ人は、他の相続人や受贈者に対して不足額を請求することが可能です。
この制度は、家族の生活保障と公平な相続の実現を目的とし、請求の対象は現物の返還ではなく、金銭による支払いと定められています(民法第1046条)。
また、請求には期限があり、相続開始と侵害の事実を知ったときから1年以内に行使しなければなりません。
遺留分侵害額請求の計算方法
遺留分侵害額は、次の手順で算出します。
- ① 遺留分の基礎財産=遺産総額+生前贈与額−債務
- ② 各相続人の遺留分=基礎財産 × 法定相続分 × 遺留分率(通常1/2)
- ③ 侵害額=各自の遺留分 − 実際の取得額
この計算により、不足分を金銭で請求できます。
遺留分侵害額請求の具体例
具体的な数字を使って計算の流れを説明します。
【事例】
- 被相続人の財産総額:4,800万円
- 法定相続人:配偶者A、子どもB・C(3人)
- 遺言内容:Aへ 400万円、Bへ 3,800万円、Cへ 600万円
- 特別受益・債務はなし
【計算手順】
- 1. 総体的遺留分率を確認する:配偶者と子がいる場合、遺留分の総体的割合は2分の1です。
- 2. 法定相続分を算出する(配偶者A:2分の1、子どもB・C:それぞれ4分の1)
- 3. 各人の遺留分を求める(Aの遺留分=4,800万円 × 1/2 × 1/2 = 1,200万円、Cの遺留分=4,800万円 × 1/2 × 1/4 = 600万円)
- 4. 実際に受け取った金額との差を確認する(Aは400万円を受け取っている→ 1,200万円 − 400万円 = 800万円が侵害額、Cは600万円を受け取っている→ 600万円 − 600万円 = 侵害なし)
【結果】
Aは800万円をBに対して遺留分侵害額請求として求めることが可能です。
Cは法定の遺留分を満たしているため、請求の対象にはなりません。
遺留分侵害額請求に関してよくある問題
遺留分侵害額請求に関しては次のような問題が生じやすいです。
**財産評価の認識違いによるトラブル**
遺留分侵害額請求では、財産の価値をどのように評価するかが大きな争点です。
不動産や株式などは時価の変動があり、相続人同士で金額の認識が異なりやすいです。
その結果、どこまでが遺留分侵害にあたるのか判断が分かれ、話し合いが長期化するケースもあります。
感情的対立による交渉の難航
相続問題は家族間で起こるため、感情が先行して冷静な話し合いが難しくなることも多いです。
請求を受けた側が「不当な要求」と感じたり、逆に請求する側が「正当な権利」と主張しすぎたりすることで、関係が悪化してしまうこともあります。
こうした事態を防ぐには、第三者を介して客観的な立場から交渉を進めることが大切です。
弁護士に依頼するメリット
遺留分侵害額請求は、法律と感情の両面で複雑な問題を含む手続きです。
弁護士に依頼することにより、請求する側・請求を受ける側の双方にとって、より公正で納得感のある解決を目指すことが可能です。
以下では、3つの観点から具体的なメリットを紹介します。
計算・証拠整理を正確に行える
遺留分侵害額請求では、「どの範囲が侵害されたのか」を示すための計算が欠かせません。財産評価・贈与の有無・債務関係などを正しく整理する必要があり、誤りがあると請求金額に大きな影響を及ぼします。
弁護士が介入することで、数字の裏づけが取れ、請求の根拠が明確になり、相手方との交渉も円滑に進みやすくなります。
感情的対立を避けて交渉を進められる
遺留分に関する話し合いは、家族間の感情がぶつかる場面になりやすいものです。
直接のやり取りでは、冷静さを欠いてしまい、話がまとまらなくなることもあります。
弁護士が代理人として間に入ることで、当事者同士が直接対立することを避けられます。
- 相手との連絡をすべて弁護士が代行
- 交渉の記録を明確に残せる
- 必要に応じて調停や訴訟へスムーズに移行できる
精神的な負担を軽減しながら、公正な解決を目指せます。
請求を受ける側の防御にも有効
遺留分侵害額請求は、請求を受ける側にとっても大きな影響を与えます。
被請求者側の立場では、どこまで支払い義務があるのか、またどのような主張が可能かを冷静に判断しなければなりません。
弁護士が介入することで、
- 支払い額の妥当性を専門的に検討
- 時効や減額の可能性を確認
- 不当な請求への対応を法的根拠に基づいて行う
といった対応が可能です。
