預金使い込み・使途不明金の事前調査
相続において「預金の使い込み」や「使途不明金」は、遺産分割を難しくする深刻な問題です。
被相続人の預金が不自然に減っている、説明のできない出金があるなどの場合、不正使用の可能性を慎重に調べる必要があります。
こうした事前調査や立証には、法律と証拠の両面からのアプローチが不可欠です。
本記事では、預金の使い込みの基礎知識から、時期による法的対応の違いや立証方法等をわかりやすく解説します。
使途不明金とは
相続における「使途不明金」とは、被相続人の財産が減少しているのに、その使い道が明らかでないお金のことです。
預金口座から多額の引き出しがあるにもかかわらず、領収書や支出の説明が伴わない場合などが典型です。
こうした状況が発生すると、相続人同士の信頼関係が揺らぎ、遺産分割の協議が難航する要因になります。
預貯金の使い込み時期による対応の違い
生前に使い込みが行われた場合、被相続人の財産を勝手に引き出した不法行為として扱われます。
この場合、被相続人は処分を行った人物に対し、不当利得の返還や損害賠償を求めることが可能です。
被相続人の死亡後には、その請求権が法定相続人へと引き継がれ、それぞれの相続分に応じた権利を持つ形になります。
相続開始「後」に預金が引き出された場合は、共有財産の一部を無断で処分した行為として扱われます。
この場合も、他の相続人は使い込んだ金額に対して、自らの相続割合に応じた返還の請求が可能です。
返還が難しい場合には、家庭裁判所での調停か裁判所へ訴訟を提起することになります。
使途不明金の立証
使途不明金を立証するには、「いつ・誰が・何の目的で」預金を動かしたのかを明確にすることが重要です。
客観的な証拠をもとに整理していく必要があります。
具体的には次の通りです。
- 通帳・取引明細の分析:出金の時期や金額を時系列で整理する
- 支出の裏付け確認:領収書・請求書・メモなどで支出目的を検証する
- 補助資料の活用:医療記録・介護記録など、本人の生活状況がわかる資料を確認する
- 関係者からの聞き取り:介護担当者や家族などに、出金の背景を尋ねる
これらを合わせることで、被相続人本人が実際に使ったのか、それとも相続人が不正に処分したのかを判断できます。
返還請求の進め方
使途不明金の使い込みが疑われる場合は、段階的な対応が必要です。
- 1. 証拠の収集・整理
- 2. 相手方との交渉:任意で返還を求め、話し合いによる解決を試みる
- 3. 法的請求(調停・訴訟):交渉で解決できない場合、不当利得返還請求や損害賠償請求を行う
- 4. 裁判所での判断・返還:請求内容をもとに裁判所が判断し、返還が命じられるケースもある
証拠の整備と交渉の進め方次第で、解決までの期間や結果は大きく変わります。
預金使い込み・使途不明金対応の注意点
上記のような対応を行っていくうえでは次の点に注意しましょう。
税務調査での対応
被相続人の死亡後に多額の引き出しが確認されると「贈与」や「名義預金」と判断され、相続税や贈与税の課税対象になる可能性があります。
調査の際は、出金の理由や使途を説明できる資料など、客観的な証拠を提示することが重要です。
記録が曖昧なまま説明を続けると、課税額が増加することもあります。
時効
不当利得返還請求は、原則として該当行為の発生から10年の時効があります。
また、不法行為による損害賠償請求は、被害を知った時から3年で時効です。
時効は一度経過すると権利を行使できなくなるため、早期の調査と証拠保全が欠かせません。
使途不明金への対応について弁護士に相談するメリット
使途不明金がある場合の対応については、弁護士に依頼することで下記のようなメリットがあります。
法的根拠に基づく適切な対応ができる
相続財産の不正使用は、単なる家族間の問題にとどまらず、民法上の不当利得や不法行為など法的根拠を伴う事案です。
弁護士が介入することで、事実関係を整理し、どの法律をもとに請求できるかを正確に判断できます。
相手方が返還を拒む場合でも、法的手続きを踏まえて冷静に対応でき、早期の解決につながります。
証拠収集と立証活動のサポートを受けられる
預金の使い込みや使途不明金を立証するには、通帳・領収書・取引記録など多くの資料が必要です。
弁護士は、どの情報が証拠として有効かを判断し、必要な資料の取得方法を具体的にアドバイスできます。
金融機関への開示請求など、個人では難しい手続きも代理可能です。
証拠の精度を高めることで、返還請求や裁判においても有利になるでしょう。
相続人間のトラブルをおさえられる
相続問題は感情的な衝突に発展しやすく、親族間の関係を悪化させることも少なくありません。
弁護士が介入することで、当事者同士の直接対立を避け、冷静で公平な交渉が可能です。
法律に基づいた中立的な立場から意見をまとめるため、感情論に左右されにくく、解決の方向性を明確にできます。
話し合いが難航した場合でも、調停や訴訟へとスムーズに移行できる点も大きな利点です。
