nisaは財産分与の対象になる?財産分与でのnisa の取り扱いを解説します
離婚時には、預貯金、不動産、退職金、株式、投資信託など、夫婦が婚姻期間中に築いた財産をどのように分けるかという「財産分与」が問題になります。簡単そうに思えるかもしれませんが、実は、お金や財産を分けることは想像以上に複雑で大変な作業になります。近年では、資産形成の方法としてnisa口座を利用する人も増えており「nisaは財産分与の対象になるのか」「名義が自分でも相手に分ける必要があるのか」といった悩みを抱える人もいらっしゃいます。
結論からいうと、婚姻期間中に夫婦の収入や共有財産をもとに積み立てたnisaは、原則として財産分与の対象になります。一方で、独身時代から保有していた口座や、相続や贈与で取得した場合は、特有財産とされるため財産分与の対象になりません。
この記事では、nisaの基本的な制度、離婚時の財産分与でnisaがどのように扱われるのか、評価額の考え方、売却や支払いの方法、弁護士に相談するメリットについて解説します。
目次
nisa(少額投資非課税制度)ってなに?
nisaと財産分与について考える前に、まずは制度の基本を確認しておきましょう。nisaは、投資によって得た利益が非課税になるという制度です。ただし、財産分与では、nisaという制度の仕組みではなく、nisa口座の中で保有している株式や投資信託などの財産が問題になります。
利益が非課税で投資できるという制度
nisaとは、少額投資非課税制度のことです。言葉だけは知っているという方も多いのではないでしょうか。
通常、株式や投資信託などの投資で利益を得た場合は税金がかかります。ですが、nisa口座で保有している対象商品については、一定の条件のもとで利益が非課税になります。通常は約20%かかる税金がゼロになるため投資がしやすくなります。
ただし、nisaはあくまで「条件を満たした場合に非課税で投資できる制度」であり、nisa口座の中にある株式や投資信託そのものが特別に財産分与から除外されるといったものではありません。
財産分与の対象になるかは、そのnisa口座の資金が夫婦の共有財産にあたるかどうかがポイントになります。
ケース別!nisaが財産分与の対象になるケースとならないケース
nisaが財産分与の対象になるかどうかは、口座の名義だけで判断されるというわけではありません。重要なのは、nisa口座内の財産が夫婦の協力で婚姻期間中に形成されたものかどうかです。名義が夫婦の一方であっても、共有財産といえる場合には、財産分与の対象になる可能性があります。
財産分与とは
財産分与とは、離婚するさいに、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を分け合うという制度です。財産分与の対象になるのは、婚姻期間中に夫婦で築いた財産です。
財産分与の対象になる財産には、預貯金、不動産、車、保険、退職金、株式、投資信託、証券口座内の残高などがあります。nisa口座で保有している株や投資信託も、夫婦の協力によって形成された共有財産であれば、財産分与の対象となります。
共有財産とは
共有財産とは、婚姻期間中に夫婦が協力して取得・形成した財産のことです。名義が夫または妻の一方になっていても、婚姻期間中に夫婦で築いた財産であれば、財産分与の対象になると考えられます。
たとえば、夫名義のnisa口座が、婚姻期間中の収入から積み立てていた場合はその投資資金は夫婦の共有財産と評価される可能性が高いでしょう。
つまり、財産分与では「誰の名義か」だけではなく、「いつ取得したのか」「どの資金で購入したのか」「婚姻期間中にどのように運用していたのか」が判断のポイントになります。
婚姻期間中に積み立てたnisaは財産分与の対象になる
婚姻期間中に、夫婦の収入や預貯金で株式や投資信託を購入していたnisa口座の場合、そのnisaは財産分与の対象になるのが原則です。
たとえば、次のようなケースでは、共有財産として扱われる可能性が高いでしょう。
・婚姻後の給与からnisa口座に積み立てていた
・夫婦の生活費口座や預貯金から投資資金を出していた
・婚姻期間中に購入した投資信託や株式を保有している
・夫婦の資産形成の一環としてnisaを利用していた
nisaの口座が財産分与の対象にならないケース
ただし、すべてのnisa 口座が自動的に財産分与の対象になるというわけではありません。
離婚時に存在している口座であっても、夫婦の共有財産ではなく、特有財産と判断される場合があるのです。
例えば、夫婦の一方が婚姻前から持っていた財産や、婚姻中であっても相続や贈与によって取得した財産などは特有財産とされます。
・独身時代に購入した株式や投資信託をnisa口座で保有している
・結婚前の預貯金を使ってnisaで投資した
・親から相続した資金でnisa口座の投資信託を購入した
・親族から贈与されたお金を使ってnisaで株を購入した
独身時代に形成した資産や、贈与や相続で得た財産については原則として財産分与の対象になりません。離婚時に存在するすべての財産が財産分与の対象というわけではないため注意しましょう。
特有財産であることを主張するためには、口座の取引履歴、入金記録、証券口座の明細、相続や贈与に関する書類などの証拠があるとよいでしょう。
nisaを財産分与する方法
夫婦の共有財産であるnisaを財産分与する場合、実際にはnisa口座そのものを分けるのではなく、口座内で保有している株式や投資信託の価値をもとに分け方を決めます。
投資商品は価格が変動するため、評価額の基準時や売却の有無を確認しておくことが大切です。後から争いにならないよう、書面に残しておくと安心です。
売却する
もっともシンプルな方法が、nisa口座内の株式や投資信託を売却し、現金化して財産分与するという方法です。
売却すれば金額が明確になるため、財産分与の計算がしやすくなります。預貯金や現金と同じように分けられるため、協議や調停でも扱いやすい方法といえるでしょう。
ただし、nisaは投資制度であるため、売却する時点の価格によって金額が変動します。当然ですが、株式や投資信託は日々時価が変わるため、売却のタイミングによって評価額や利益が異なります。今後も投資を続けたい場合には、売却によって投資機会を失う可能性があることに留意しましょう。
財産分与のさいに、売却するかどうかは、現在の時価、今後の運用方針、夫婦間の話し合い、他の財産とのバランスを考えて判断する必要があります。
評価額に従って支払う
nisa口座を売却せず、保有している人がそのまま運用を続ける代わりに相手に評価額に応じた金額(代償金)を支払う方法もあります。
たとえば、夫名義のnisa口座に評価額200万円分の投資信託があり、それがすべて共有財産と判断される場合、妻に財産分与として100万円を現金で支払うという考え方です。
この場合、トラブルになりやすいのが評価の基準です。nisa口座の投資信託や株式は価格が変動するため「いつの時価で計算するか」を明確にしておかないと、後から争いになる可能性があります。
多くの場合は、評価額は財産分与時の時価とされています。ここで注意したいのが、婚姻期間中の時価ではないということです。そして、財産分与をした後で「価値が上がったから増額する」というような性質でもありません。
財産分与のときの時価を証明するために、証券会社の残高証明書、取引履歴、評価額の一覧などを提出し、協議や調停で基準時を確認しながら進めるのが現実的です。
nisa口座は名義変更ができない
nisa口座は、ひとりにつきひとつのみ開設できる非課税口座です。そして、口座の名義変更は制度上できません。そのため、財産分与であっても夫名義のnisa口座を妻名義にそのまま変更する、妻名義のnisa口座を夫名義に移すことができないのです。
ですので、財産分与として対応する場合は、売却して現金で分ける、または名義人が口座を保有し続ける前提で財産分与時の評価額に相当する金額を相手に支払う方法になります。
不動産のように名義変更して渡すことはできません。
nisaの評価額を確認するために必要な資料
nisaを財産分与する際は、口座内の資産内容や評価額を確認できる資料を準備する必要があります。
次のような資料があるとよいでしょう。
・証券口座の残高証明書
・取引履歴
・年間取引報告書
・投資信託や株式の評価額が分かる資料
・入出金履歴
婚姻期間中に積み立てた資産なのか、婚姻前から保有していた資産なのかを判断するためには、取得時期や購入資金の出どころを確認することが重要です。相続や贈与で取得した資金を使っている場合は、遺産分割協議書、贈与契約書、銀行口座の入金履歴などが証拠になることもあります。
nisaの財産分与は弁護士に相談すべきか
財産の中にnisaなどの投資口座がある場合は、預貯金のように残高を確認するだけでは判断しにくいというケースもあるでしょう。
株式や投資信託の評価額は変動していますし、取得時期や資金の出どころによって、共有財産か特有財産かの判断が変わるため複雑です。話し合いでの協議が進まない場合は、早い段階で弁護士に相談するという方法もあります。
弁護士に相談するメリット
財産分与について次のような悩みや事情がある場合は、弁護士への相談を検討したほうがよいでしょう。
・相手がnisa口座や証券口座の情報を開示しない
・婚姻前からの資産と婚姻期間中の積み立てが混在している
・相続や贈与で取得した資金を使っている
・評価額について主張が対立している
・株式や投資信託の売却について意見が合わない
・財産分与だけでなく、養育費、慰謝料、親権、面会交流、不倫、dv、モラハラなどの問題もある
財産分与について弁護士に相談するメリットは、財産分与の対象になる財産と、対象にならない特有財産を法律的に整理できる点です。
nisa口座にある資産が共有財産なのか、特有財産なのかを判断するには、取得時期、資金の出どころ、取引履歴、夫婦の生活状況などを確認する必要があります。自分では「これは自分名義だから対象外」と思っていても、実際には財産分与の対象になるというケースもあります。反対に、相手から請求されている財産が財産分与の対象にならない特有財産と認められる可能性もあります。
また、弁護士に依頼すれば、相手方への資料提出の求め方、財産目録の作成、評価額の確認、協議書の作成、離婚調停や裁判での主張なども含めてすべて相談できます。
費用が心配というケースもあるかもしれませんが、法律事務所によっては、初回無料相談やオンライン相談、予約制の相談を行っているところもあります。専門家へ相談することで、適切な解決方法を検討しやすくなります。
まとめ
nisaは非課税で投資できる制度です。財産分与の場合は、非課税という制度そのものではなく、口座内の資産が夫婦の共有財産かどうかがポイントになります。
婚姻期間中に夫婦の収入や預貯金から積み立てたnisaであれば、原則として財産分与の対象になります。一方で、独身時代から保有していた資産や、相続・贈与によって取得した資金で購入したものは、特有財産として分与の対象外になるのが原則です。
そして、nisaはひとりにつきひとつの口座と限定されており、名義変更もできません。そのため、財産分与のさいには、売却して現金で分けるか、評価額に従って相手に代償金を支払う方法があります。ただし、株式や投資信託は時価が変動するため、どの時点の評価額を基準にするかで意見が対立する可能性もあります
相手との協議が難しい場合や、特有財産であるという主張がある場合は、早めに弁護士へ相談して対応することをおすすめします。
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