法定離婚事由とは?当てはまらないと離婚できない?4つの事由と対処法を解説
配偶者が離婚に応じてくれないとき裁判で離婚することになります。その時に必要になるのが法定離婚事由です。
離婚を考えるときに「法定離婚事由がなければ離婚できないのか」と不安になる方は少なくありません。結論からいえば、法定離婚事由が必要になるのは、相手の同意がなく話し合いが決裂した場合に裁判をする場面です。
裁判ではなく、夫婦双方が合意していれば離婚は可能です。そし、調停離婚では法定離婚事由に該当しなくても離婚できます。この記事では民法第770条の4つの離婚原因、離婚できないケースで検討する手続き、裁判に必要な証拠などについて解説します。
目次
法定離婚事由とは?
法定離婚事由とは、夫婦の一方が離婚に同意しない場合に、裁判所が判決による離婚を認めるための法的な理由です。
法律が定める強制的に離婚できるとされる理由
法定離婚事由は民法第770条1項に規定されているルールです。裁判所が離婚を判断するための基準になるのが4つの法定離婚事由です。
不貞行為:配偶者が第三者と性的関係を持った場合です。
悪意の遺棄:正当な理由なく同居・協力・扶助の義務を果たさないというものです。生活費を一方的に渡さない、理由なく家を出て配偶者を放置する、といった事情が問題になります。
3年以上生死不明:配偶者が生きているか亡くなっているか明らかでない状態が3年以上継続している場合です。単に連絡先や居場所が不明というだけでは足りず、生死そのものが分からないことが必要です。
その他婚姻を継続し難い重大な事由:長期間の別居、DV、モラハラ、重大な犯罪、過度な浪費や借金などがこれに該当します。何が「婚姻継続しがたい重大な事由」に該当するかは裁判所が判断します。
不貞などを行った有責配偶者からの離婚請求のケースでは、別居期間、未成熟の子どもの有無、相手方が離婚後に過酷な状態へ置かれないかなども含め、慎重に判断されます。
以前は「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」が法定離婚事由として規定されていましたが、2026年4月1日施行の改正で削除されました。
法定離婚事由があっても離婚が認められない場合もある
法定離婚事由に該当すれば、必ず離婚判決が出るわけではありません。民法は第770条2項で、一切の事情を考慮して婚姻の継続が相当と認められるときは、裁判所が離婚請求を棄却できると定めています。
法定離婚事由に該当しなくても離婚はできる
法定離婚事由は、すべての離婚に共通している要件ではありません。双方が合意している場合は、法定離婚事由ではなくても離婚できます。
双方の合意
民法は第763条で「夫婦が協議で離婚できる」と定めています。
つまり、離婚について双方が合意していれば離婚は成立します。極端な例ですが「お互いに飽きてしまった」「性格が合わない」「親と仲が悪い」といった理由であっても双方が納得していれば、離婚はできます。
調停
当事者だけでは離婚の話し合いが進まない場合には、調停という方法があります。
調停は、家庭裁判所へ夫婦関係調整調停(離婚)を申し立てて手続きをしますが、裁判ではありません。調停委員会が中立の立場で双方から事情を聴いて、離婚の可否と条件について解決案を示しながら合意を目指すというものです。
裁判所で行う手続きではありますが、調停は判決ではなく話し合いの手続きなので、法定離婚事由に該当していなくても調停で合意すれば離婚できます。
裁判で離婚する場合は法定離婚事由がポイントに
協議や調停で双方が納得できない場合は、家庭裁判所へ離婚訴訟(離婚裁判)を提起します。ここでポイントになるのが法定離婚事由です。
裁判では法定離婚事由が離婚の判断材料になる
明らかな法定離婚事由がなく、夫婦関係が破綻しているとも認められない場合、判決による離婚ができない可能性が高くなります。
ただし、不貞行為や悪意の遺棄に該当しないケースでも、別居期間、DVやモラハラの内容、夫婦間の信頼関係、婚姻生活の回復可能性などが総合的に「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が認められる可能性があります。
自分では「法律上の理由がないかもしれない」と考えていても、事実を整理して証拠を揃えることで判断が変わることがあります。反対に、不満や精神的な負担があるだけで、裁判離婚が成立するわけでもありません。
法定離婚事由と慰謝料請求は別の問題
法定離婚事由は離婚の理由ですが、これが認められることと、離婚の慰謝料を請求できるかは別の問題です。慰謝料が認められるためには、不貞行為やDVなどによって精神的な損害を受けたことを照明して、相手に責任があることを主張しなければなりません。
離婚理由と慰謝料について
たとえば、長期間の別居によって婚姻関係が破綻しているとして離婚が認められても、相手方に違法な行為や責任がなければ、慰謝料は認められない可能性があります。反対に、不貞行為や暴力などがある場合は、離婚請求とあわせて慰謝料を請求できるケースがあります。
慰謝料の金額は行為の内容や期間、婚姻期間、子どもの有無、精神的苦痛の程度などによって判断されます。
離婚理由と財産分与について
法定離婚事由に該当しているかどうかと、財産分与は別の問題です。
法定離婚事由があってもなくても、財産分与については別に話し合いを行います。法定離婚事由はあくまでも「裁判で離婚するときの基準」であり、他の離婚時の話し合いとは切り離して考えましょう。
法定離婚事由がない場合に別居してもいい?
法定離婚事由がない場合でも、夫婦関係を見直すために別居することは可能です。別居期間が長くなり、夫婦関係を修復できる見込みがないと判断されれば、将来的に「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性もあります。
別居中は婚姻費用を請求できる
離婚が成立するまでは、関係が悪化していても夫婦ですので互いの生活を支える義務があります。そのため、収入の少ない側は、収入の多い配偶者に対して、別居中の生活費である婚姻費用を請求できる可能性があります。
離婚できないときはどうしたらいい?
相手が離婚に応じてくれず、法定離婚事由がないというときはどうしたらいいのでしょうか。離婚の問題はとてもデリケートで感情的な対立が深くなるケースもあります。ですが、大切なのは、お互いの意見の違いを整理して冷静に対応することです。
協議離婚
多くの場合、話し合いが離婚のスタート地点になります。
まずは、離婚を求める理由と希望条件を具体的に相手に提示すること、そして、どうして相手が離婚に応じないのかを確認します。
そして、財産分与の額、養育費、親権、親子交流、慰謝料といった離婚のための話し合いのポイントを一覧にして、譲れる点と譲れない点を分けて冷静に交渉を進めましょう。合意した内容は口約束で終わらせず、離婚協議書や公正証書に残すほうが安心です。
ただし、DV、脅迫、強いモラハラがある場合は、まずは安全を優先し対面で協議は避けましょう。早い段階で弁護士や警察、配偶者暴力相談支援センターへ相談してください。
調停
協議がまとまらない、相手と直接話せない、条件の差が大きくて話し合いが進まないといった場合は、離婚調停という方法があります。
調停では、離婚と同時に親権、養育費、親子交流、財産分与、年金分割、慰謝料などについて話し合いを行います。調停は裁判ではありませんが、調停成立後の調停調書に法的効力が生じます。ですが、法定離婚事由に該当しなくても調停での離婚は可能です。
法定離婚事由の判断で重視される事情
法定離婚事由に該当するかは、ひとつの出来事だけで決まるとは限りません。裁判所は、さまざまな事情を総合的に考慮して離婚の判断をします。
別居期間と夫婦関係の状態
長期間の別居しているという事実は、夫婦関係がすでに破綻していることを示す事情のひとつとして考慮されます。ただし「長年別居を続ければ必ず離婚できる」というものではありません。
婚姻期間に対して別居期間がどの程度に及ぶか、別居の原因がどちらにあるのか、別居中にどの程度の交流があるのか、生活費の支払いが続いていたかなどを総合的に判断します。
裁判で離婚する場合
離婚の訴訟は、基本的に先に家事調停を行い、不成立などで解決できなかった後に進みます。裁判所は双方の主張と証拠を確認し、法定離婚事由の有無や離婚請求を認めることが相当かを判断します。
つまり、法定離婚事由が必要になるのはこの段階ということです。
法定離婚事由に該当するという証拠が必要
裁判で離婚する場合は、相手の行為や婚姻関係の状態を客観的に示す証拠が重要です。集める資料は、主張する法定離婚事由によって異なります。
不貞行為:メッセージ、写真、ホテルの領収書、位置情報、調査報告書など
悪意の遺棄:生活費の送金記録、預金通帳、別居の経緯が分かる連絡、家賃や公共料金の資料など
3年以上生死不明:警察への行方不明者届、親族や勤務先への照会記録、最後に連絡が取れた時期を示す資料など
婚姻を継続し難い重大な事由:診断書、録音、メール、日記、警察や相談機関の記録、別居開始日と別居生活を示す資料など
離婚の証拠は、入手経緯や内容によって証明力が変わります。また、証拠になると思っていた物が実は裁判では証明力が十分ではないというケースもあります。そして、違法性がある方法で証拠を取得すると別のトラブルや不利な争点を生む可能性があるため、証拠の種類や収集の方法について弁護士へ相談すると安心です。
離婚問題は弁護士に相談しましょう
離婚問題は、単に夫婦がその関係を終わらせるかではなく、子ども、生活費、財産分与などの複雑でデリケートな問題についての話し合いを同時にすることになります。法律の知識が必要な場面もありますので、早めに弁護士へ相談するほうがいいでしょう。
最適な離婚の方法を相談できる
弁護士は、協議を続けるメリットがあるのか、離婚調停へ進むべきか、訴訟を見据えて準備すべきかを法的に整理し、手続きを進めるためのサポートを行える専門家です。
そして、弁護士は相手との交渉を代行することもできます。弁護士に依頼することで、直接連絡する精神的負担を抑えながら、養育費、財産分与、慰謝料などの話し合いができます。
また、弁護士には守秘義務があるため「離婚のことを知られたくない」「職場に知られたくない」という場合でも、秘密が弁護士から漏れる心配をしなくてよい相手です。
弁護士を選ぶ際は、離婚事件の取扱実績、相談料・着手金・報酬金などの費用と相場、連絡方法、担当者の説明の分かりやすさや話しやすさなどで選びましょう。
法定離婚事由に該当する可能性があるのか
「不倫の証拠が弱い気がする」「別居期間が短い」「性格の不一致しか離婚理由が思い当たらない」という場合でも、そのほかの事情と合わせれば婚姻関係の破綻が認められる可能性はあります。
弁護士は、個別の事実を法律に当てはめ、請求が認められる見込みを検討して対応します。
一方で、裁判を続ける時間や費用、子どもへの影響、相手側の反論も考慮が必要となります。法定離婚事由が弱く裁判での離婚が見込みが低いという判断をした場合でも、別居を継続しながら婚姻費用を請求する、条件を調整して協議離婚を目指すなど、訴訟以外の解決方法も弁護士のサポートを受けられます。
まとめ
法定離婚事由は、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、その他婚姻を継続し難い重大な事由の4つです。この法定離婚事由は「裁判離婚の場合」は非常に重要なポイントとなります。相手が離婚に同意せず、判決で離婚を成立させるには、原則として法定離婚事由とそれを裏付ける証拠が必要になります。
ですが、協議離婚や調停の場合は、法定離婚事由に該当しなくても離婚が可能です。
「法定離婚事由に該当しない」と思える状況でも、協議の進め方、調停の利用、事実と証拠の整理によって解決の可能性は変わります。個別の事情ごとに適切な判断が異なるため、早めに弁護士へ相談し、自分の生活を守る方法を検討しましょう。
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